宇宙科学I (文科生)

イントロダクション

土井靖生

2019/9/27

この講義の内容

“天文学”の守備範囲について紹介します。

  • “宇宙”全般を扱います
  • 対象範囲は非常に広いです
    • すぐ後で一応の定義をします
  • 直接行くのが“不可能”な場所を扱います
    • 最近は太陽系内についてはそうでもなくなりつつあります
  • 「究極のリモートセンシング」
    • 研究のためにはいわゆる理系の知識(「数学」「物理」「化学」「地学」…)を総動員する必要があります
  • 本講義では出来るだけ平易な解説を心掛けます
    • ごく稀に数式が出て来ますが無視して下さい

評価&履修

  • 評価
    • 期末試験の点数に基づき評価します
  • 履修
    • 宇宙科学実習 I & IIも合わせて履修可能です
      • 実際の観測データを用いた解析実習を行います
    • 【参考】理系向け科目として宇宙科学Iと宇宙科学IIを開講しています
      • 宇宙科学IIは天文学の個別のテーマに絞った講義を行います

関連講義リスト

講義資料

講義資料の置き場所

ネット上に掲示しています。

http://akari.c.u-tokyo.ac.jp/~doi/Astronomy/

「宇宙」とは何か?

「宇宙」の定義

「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」
(宇宙条約)

  • 第一条:宇宙空間の探査・利用の自由
  • 第二条:領有の禁止
  • その他平和利用の原則など

“宇宙空間” = 「地球大気の外側」

\(\downarrow\)

地球大気の厚さはどれだけか?

  • 宇宙空間は概ね“地上100km以上”が定義
    • 領空の上限 (明文化はされていない)

地球大気の厚み

  • 大気の圧力分布:大気圧\(=\)「頭の上にある空気の重さ」
    • 1気圧の大気の(個数)密度 : \(2 \times 10^{19}\) \([個\ \mathrm{cm}^{-3}]\)
    • 地球大気は主に8割が窒素分子、2割が酸素分子

宇宙空間から見た大気層

宇宙ステーション(高度400km)、オーロラ(高度100km)

NASA

「天文学」

ひと昔前の天文学の守備範囲

  • 宇宙空間に存在するもののうち、惑星以外の全て
  • 太陽、星、星間物質、銀河、銀河団、宇宙全体、、、
  • 惑星だけは“惑星科学”の守備範囲(だった)

太陽系外惑星の発見

  • 現在までに5000個以上の系外惑星を検出
    • ほとんどは“間接的”検出だが一部直接観測も
  • 系外惑星の大気組成や地形の観測も近い将来可能に
    • 天文学と惑星科学の境界は無くなりつつある
      • 夏学期 惑星地球科学I (理科生; 小宮 剛)
      • 夏学期 惑星地球科学I (文科生; 磯﨑 行雄)
      • 冬学期 惑星地球科学I (理科生; 小久保 英一郎)

ペガスス座HR8799星(地球からの距離129光年)

(Credit: Jason Wang and Christian Marois)

太陽・星

星の色と内部のエネルギー源

  • 星の質量による性質の違い

星の質量と主系列星としての寿命

宇宙の元素存在比(太陽存在比)

data from Lodders (2010)

星の終末

MiraのALMAによる観測画像

ミラの星風によるtail

惑星状星雲

ベテルギウス(オリオン座の一等星)の終末

Michael Busse

超新星残骸(かに星雲)

ブラックホール・重力波

重力波の検出

  • 2015年9月14日9時50分45秒に重力波を初検出
  • 質量\(35.4~\mathrm{M}_{\odot}\)\(29.8~\mathrm{M}_{\odot}\)のブラックホールの衝突・合体
  • 2017年8月17日12時41分4秒には中性子星合体を初検出

Credit: . Ossokine/A. Buonanno/T. Dietrich (MPI for Gravitational Physics)/R. Haas (NCSA)/SXS project

教科書が書き換わってしまいました。

星間物質

オリオン座(可視光 vs. 赤外線)

国立天文台(可視光画像)、ISAS/JAXA(赤外線画像)

オリオン座

Credit & Copyright: Rogelio Bernal Andreo

暗黒星雲

暗黒星雲(可視光 vs. 赤外線)

暗黒星雲(赤外線)

星形成・惑星系形成

オリオン大星雲

Proplyd atlas

濃い星間ガス中での星生成

原始惑星系円盤

HL Tau

TW Hya

HD97048

系外惑星データベース

TRAPPIST-1


Habitable Planets

小惑星サンプルリターン

  • はやぶさ
    • S-type (イトカワ)
    • 2003年打ち上げ
    • 2005年夏小惑星到着
    • 2010年6月13日地球帰還

ISAS/JAXA

現在実施中のサンプルリターンミッション

  • はやぶさ2
    • C-type (リュウグウ) 2014年12月3日打ち上げ、2018年6月27日到着、2019年出発、2020年末帰還
  • OSIRIS REx (Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security, Regolith Explorer)
    • C-type (ベンヌ) 2016年9月8日打ち上げ、2019年10月19日到達、2021年3月21日出発、2023年9月24日帰還

はやぶさ2

ISAS/JAXA

我々の銀河系

全天の星の分布

銀河系全体図

銀河中心(大質量ブラックホール)

David Butler

\(4\times 10^6~\mathrm{M}_{\odot}\) ## 銀河回転とダークマター

M31 (copyright: imgur)

遠くの銀河

スターバースト銀河 (M82)


NASA, ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA).
Acknowledgment: J. Gallagher (University of Wisconsin), M. Mountain (STScI) and P. Puxley (NSF).

クェーサーからのジェット


Credit: NASA, ESA, S. Baum and C. O'Dea (RIT), R. Perley and W. Cotton (NRAO/AUI/NSF)
and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)

銀河の衝突・合体


NASA, ESA, and the Hubble SM4 ERO Team

宇宙の大規模構造

SDSS

計算機シミュレーション

IllustrisVogelsberger et al. (2014)

SUBARU/HSC

  • 重力レンズ効果を利用したダークマターの分布図

クレジット:国立天文台/東京大学

ビッグバン

ビッグバンと宇宙膨張

宇宙背景放射の揺らぎ

宇宙背景放射の揺らぎスペクトル

宇宙の質量-エネルギー構成比

Planck Collaboration et al. 2016, A&A, 594, A13

質問

質問対応について

  • 質問は授業途中にも随時して下さい。
  • 授業終了後個別に聞きに来てくれても良いです。
  • 授業時間以外の質問は以下にお願いします。