宇宙科学I (文科生)

星の進化と終末

土井靖生

2019/10/25,11/1

今回のポイント1/4

  • 星の一生、特にその晩年の様子を述べます
  • 星の死に方は星の重さで決まる
    • 軽い星から順に「惑星状星雲+白色矮星」「超新星爆発+中性子星」「超新星爆発+ブラックホール」
  • 「主系列星」: 中心部で水素の核融合を起こしている星
    • 星は一生の大半を「主系列星」として過ごす
  • 「赤色巨星」: 中心部の水素が全てヘリウムに変換
    • 中心部の周り(より外側)で水素核融合
    • この時星の表面から全体の2割以上のガスが流れ出す
      \(\to\)「惑星状星雲」となる
    • 軽い星はここで一生を終える

今回のポイント2/4

  • 「赤色超巨星」: ヘリウムの核融合
    • 太陽程度\(\sim\)太陽の8倍程度の重さの星は中心部でヘリウムの核融合が起こる
    • ヘリウムから炭素や酸素が合成される
    • 水素核融合時と同様の現象が進む
    • ただしヘリウムは水素に比べて\(1/10 \sim 1/100\)の時間で燃え尽きる
    • 「赤色超巨星」となり、表面から激しくガスが流出
      \(\to\)熱い中心核がむき出しとなる:「白色矮星」
    • 「白色矮星」内部では核融合は終了。徐々に冷却して星の一生を終える。

今回のポイント3/4

  • 「超新星爆発」: 太陽の8倍よりも重たい星の最期
    • 炭素核融合により、より重たい元素合成が起こる
    • 鉄が出来たところで核融合がストップ・「超新星爆発」が起こる
    • 中心核は「中性子星」として残る
  • 距離指標としての巨星・超巨星
    • 特注的な周期で明るさが変化: 「変光星」
    • 星の明るさと変光周期を測ると、星までの距離を知ることが出来る
    • 「年周視差」は我々の銀河系内部の距離が測れる
    • 「変光星」は近くの銀河までの距離が測れる

今回のポイント4/4

  • 距離指標としての超新星爆発
    • 「白色矮星」に隣の星からガスが限界を超えて降り積もると、潰れて「中性子星」となる
    • この時起こる超新星爆発は一定の明るさ\(\to\)我々から見た明るさと比較することで距離を知ることが出来る
    • かなり遠方の銀河までの距離を測れる
  • 水素・ヘリウム以外の(ほとんどの)元素は星で作られる
    • 核融合で出来た“重元素”が巨星・超巨星からの“質量放出”により宇宙空間に撒かれる
    • 超新星爆発時に“重元素”が放出される
    • 中性子星と中性子星が合体した時にも多くの元素が合成される

主系列星
(main sequence stars)

主系列星

  • 中心部で水素の核融合が進行
    • ppチェインとCNOサイクルで水素をヘリウムに変換
  • 星はこの状態が最も安定
  • 一生の大半を主系列星として過ごす
  • 星の質量に応じてHR図上の位置が決まる
    • 個々の星はHR図上で(ほぼ)同じ位置に留まる
<span style="font-size:16px;position:relative;top:-50px">[ESO](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hertzsprung-Russel_StarData.png)</span>

ESO

主「系列」星と呼ばれる理由

  • 以前(1930年頃まで)
    星が高温 \(\to\) 低温に向けて進化すると考えられており、その名残で“main sequence stars”と呼ばれる
    • ただし1つの星団のHR図を考える場合あながち間違いではない(後述)
  • 高温(大質量)の星:
    早期型星(early-type stars)
  • 低温(低質量)の星:
    晩期型星(late-type stars)
<span style="font-size:16px;position:relative;top:-50px">[ESO](https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hertzsprung-Russel_StarData.png)</span>

ESO

星の晩年1
赤色巨星 (red giant)

太陽の年齢と寿命(再掲)

  • 横軸: 半径(太陽半径で規格化)
  • 縦軸: 水素の重量比
  • 各線は 10 億年毎 (0-100 億年)

現在の太陽中心部のH存在比は\(0.33\)と推測される。
\(\to\) 現在の太陽年齢は約46億年

太陽の寿命は約100億年

HR図上での“進化”

  • 中心部で水素が枯渇
    • He \(\to\) C \(\to \cdots\) の順に燃焼が進む
    • どこまで燃焼が進むかは星の質量に拠る
  • HR図上の位置で星の質量や進化段階を特定出来る

主系列後の進化1:赤色巨星

  • 中心部で水素が枯渇
    • ヘリウムコアの生成
    • ヘリウムが核融合を起こすには圧力が不足
  • 中心部は収縮 \(\to\) 密度上昇
  • 中心部の外側で水素核融合
    • “shell burning”
  • 圧力上昇\(\to\)星全体は膨張
  • 表面温度が下がり
    「赤色巨星」(red giant stars)となる

HR図上の赤色巨星の“進化”

  • 主系列の位置から右上に「赤色巨星分枝」(red giant branch: RGB) を進む
    • ヘリウム核が大きくなるに従い加速度的に進む
    • \(1~M_{\odot}\)の星はRGB上に5億年程度滞在

太陽の場合
最大半径は\(>100 R_{\odot}\)

質量放出

  • 巨星は膨れ上がった表面からガスが流れ出す
    • 質量放出: mass loss
    • 星間塵の供給源のひとつ
  • 赤色巨星の場合、典型的な質量放出率は小さい
    • \(< 10^{-8} ~\mathrm{M}_{\odot}~\mathrm{yr}^{-1}\)
    • cf. 太陽風による質量放出率 \(\sim 10^{-14} ~\mathrm{M}_{\odot}~\mathrm{yr}^{-1}\)
  • slow wind: \(v_{\mathrm {wind}} \simeq 5–30~\mathrm{km~s^{−1}}\)
  • \(1 M_{\odot}\) の星の場合、赤色巨星の間に \(0.25 M_{\odot}\) 程度の質量を失う
  • 但し質量放出の正確な原因は不明
    • 恐らくは太陽風と同様の磁場駆動か輻射圧による

低質量星の終末 \(( M < 0.5 M_{\odot} )\)

  • 水素の核融合には\(T\geq 10^7\)Kが必要
  • ヘリウムの核融合には\(T\geq 10^8\)Kが必要
  • \(M < 0.5 M_{\odot}\) の星の場合、赤色巨星段階でもヘリウムの核融合が始まらない
  • 水素の殻燃焼終了後星は冷えて一生を終える


ただし低質量星の寿命は
宇宙の年齢よりも長い
ことに注意

星の晩年2
ヘリウム核燃焼

“トリプル\(\alpha\)”反応

  • \(T > 1-2 \times 10^8\) K で開始
  • 3つのヘリウム原子核(“\(\alpha\)粒子”)からひとつの炭素原子核を作る反応
    • 原子核反応の際に観測される放射線を\(\alpha\)線,\(\beta\)線,\(\gamma\)線と命名
      • \(\alpha\)線:ヘリウム原子核
      • \(\beta\)線:電子
      • \(\gamma\)線:高エネルギーの光子
  • 先ず2体反応で\(^8\mathrm{Be}\)を生成
    • \(^8\mathrm{Be}\)は不安定同位体
      (寿命\(10^{-16}\)秒)
  • もう一つのヘリウムと反応して\(^{12}\mathrm{C}\)を生成

Triple-alpha process

\[\begin{align} \mathrm{He} + \mathrm{He} &\to \mathrm{Be}\\ \mathrm{Be} + \mathrm{He} &\to \mathrm{C} + \gamma \end{align}\]
ファウラー (1911–1995): この過程の存在を実験的に証明し 1983年ノーベル物理学賞受賞

水平分枝 (Horizontal Branch)

  • 中心核ではヘリウム、その外側では水素が核融合
    • 中心核の膨張により、水素の燃焼殻も膨張\(\to\)反応率は低下
    • 星の表面温度は上がるが半径は縮小\(\to\)HR図上を左に進む
    • \(1~M_{\odot}\)の星はHB上に1億2千万年程度滞在

距離指標としての水平分枝

  • ヘリウム核の燃焼はヘリウム核質量\(0.46~M_{\odot}\)で開始
    • 星全体の質量に依らない
    • HBの星の明るさは低質量星\((\leq 1.4~M_{\odot})\)の場合どの星もだいたい同じ\(\sim 50~L_{\odot}\)
  • 距離指標 (standard candle)として用いることが出来る
“星団”の星のHR図
  • 星団の星はほぼ同時に生まれたと考えられる\(\to\)HR図から年齢が決められる

星の晩年3
赤色超巨星 (red supergiant)

ヘリウム核燃焼の終了

  • 中心核には炭素が溜まる
  • ヘリウム核融合の終了
    • \(3\alpha\)反応で得られるエネルギーはCNOサイクルの\(<1/10\)以下
    • ヘリウム核燃焼は水素核燃焼の1/100程度の期間で終了
      • 太陽質量の星なら1億年程度
  • 炭素核融合\(>5\times10^8\) Kが必要
    • cf.ヘリウム\(>1\times10^8\) K
  • \(<8~M_{\odot}\)の星は炭素核融合を開始出来ない
  • 中心核の収縮により高温化\(\to\)ヘリウム殻燃焼の開始

漸近巨星分枝

  • 水素殻燃焼(赤色巨星)と同様にHR図を右上に移動
  • 巨星枝に“漸近”することから
    「漸近巨星分枝」(Asymptotic Giant Branch: AGB)
    と呼ばれる
  • \(1~M_{\odot}\)の星の明るさは\(L\sim 10^5L_{\odot}\)にも達する
  • AGBの滞在期間は\(\sim500\)万年\((1~M_\odotの星の場合)\)

AGB星の変光

  • AGB星のエネルギー源:水素とヘリウムの殻燃焼
    • ヘリウム殻燃焼により外側の水素殻燃焼を抑制
    • ヘリウム殻が燃え尽きると水素殻燃焼によりヘリウム供給
  • ヘリウム殻と水素殻が交互に燃焼
    \(\to\)星全体が“脈動変光”を起こす
  • 代表例はくじら座のミラ
  • 「ミラ型変光星」と呼ばれる

ミラの変光光度曲線

脈動に伴う質量放出

  • AGB星は脈動に伴い外層から多くの質量を放出
    • \(10^{-8}-10^{-4} ~\mathrm{M}_{\odot}~\mathrm{yr}^{-1}\) (右図参照)
    • cf. RGB星の質量放出率は\(< 10^{-8} ~\mathrm{M}_{\odot}~\mathrm{yr}^{-1}\)
  • AGB滞在中に水素の外殻の大半を放出
  • AGBの滞在期間は\(100 \sim 200\)万年程度
    • 質量放出率で決まる

質量放出の総量

MiraのALMAによる観測画像

ミラの星風によるtail

LL Pegasi (伴星を持つミラ型変光星)

LL Pegasi の3次元構造モデル

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/H. Kim et al.

惑星状星雲

AGB周囲の星雲

  • AGB星からの質量放出
    • 水素の外殻の大半を放出
  • 高温の中心核がむき出しになる
    • 小質量の“矮星” (dwarfs/dwarf stars) が残る
    • \(T_{eff} \sim 5 \times 10^4\)K \(\to\) “白色矮星”(white dwarfs)
  • 周囲には吹き飛ばされたガス雲
    • 中心星からの紫外線に照らされて輝く
    • 昔の望遠鏡で一見惑星の様に見えたことから“惑星状星雲”(planetary nebulae)と呼ばれる
  • 白色矮星中心部では核融合は止まっており、徐々に冷却して星の一生を終える

HTS images

星の一生のまとめ(太陽質量の星の場合)

太陽より重い星の進化

オリオン座の一等星

Michael Busse

星内部の核融合プロセス

\(\geq 8\ \mathrm{M}_{\odot}\)の星は炭素核融合が可能

A. C. Phillips, The Physics of Stars, 2nd Edition (Wiley, 1999).

Heより重たい元素の燃焼: \(\alpha\)プロセスの進行

Triple-alpha process

\[\begin{align} \mathrm{He} + \mathrm{He} &\to \mathrm{Be} + \gamma\\ \mathrm{Be} + \mathrm{He} &\to \mathrm{C} + \gamma \end{align}\]

Alpha process

\[\mathrm{^{12}C} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{16}O} + \gamma\] \[\mathrm{^{16}O} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{20}Ne} + \gamma\] \[\mathrm{^{20}Ne} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{24}Mg} + \gamma\] \[\mathrm{^{24}Mg} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{28}Si} + \gamma\] \[\mathrm{^{28}Si} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{32}S} + \gamma\] \[\mathrm{^{32}S} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{36}Ar} + \gamma\] \[\mathrm{^{36}Ar} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{40}Ca} + \gamma\] \[\mathrm{^{40}Ca} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{44}Ti} + \gamma\] \[\mathrm{^{44}Ti} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{48}Cr} + \gamma\] \[\mathrm{^{48}Cr} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{52}Fe} + \gamma\] \[\mathrm{^{52}Fe} + \mathrm{^4He} \to \mathrm{^{56}Ni} + \gamma\]

巨星の内部構造

セファイド型変光星 (Cepheids)

セファイド型変光星の周期-光度関係

  • 光度 \(300 \sim 25000\ L_{\odot}\)
  • 変光周期 \(1日 \sim 50日\) (最長250日)
  • 変光周期から星の明るさが分かる \(\to\) 距離測定に使える

変光の理由:星内部のガスによる光の吸収

水素“原子模型”
(Bohr model)

エネルギー準位と吸収線

水素スペクトル吸収線

温度が1万度を超えると急激に吸収係数が増大

ガスの光吸収係数の温度依存性

  • ガス温度は不安定領域に留まれない
    • 温度上昇 \(\to\) 吸収係数大 \(\to\) 温度更に上昇
    • 温度下降 \(\to\) 吸収係数小 \(\to\) 温度更に下降
  • 不安定領域の前後で温度\((= ガス圧)\)が振動

Seaton, Yan, Mihalas, & Pradhan 1994, MNRAS, 266, 805 よりおおよそ\(10~\mathrm{M}_{\odot}\)の星に相当する計算値を引用。

変光の原因:“脈動”の励起

  • 特定の温度で不安定 \(\to\) ある深さに不安定層が存在
  • 不安定層の振動が星表面の脈動を励起出来る条件
    • 不安定層により押し広げられる外側のガス量
      • 表面温度低 \(\to\) 不安定層が内側 \(\to\) ガス量多
      • 表面温度高 \(\to\) 不安定層が外側 \(\to\) ガス量少
    • 振動の周期が外側のガスの振動とマッチ(共振)

周期-光度関係の理由

項目 小質量星 大質量星
星質量
直径
光度 暗い 明るい
密度 高(硬い) 低(軟らかい)
振動周期 短い 長い

Leavittによる周期-光度関係の発見

  • Henrietta Swan Leavitt (1868–1921)
  • 小マゼラン星雲の1777個の変光星を観測
  • 25個の変光星で周期-光度関係を発見

左図:Henrietta Swan Leavitt (1868–1921) (Wikimedia commons)

右図:彼女の発見した周期-光度関係 (Leavitt, & Pickering 1912, Harvard College Observatory Circular, 173, 1)

Hubble による応用

  • “星雲”が遠く離れた銀河であることを確定(1924)
  • 宇宙膨張の発見(1929)

横軸はセファイドから求めた距離: \(10^6\), \(2\times 10^6\) pc \(= 326万,~652万光年\)

超新星爆発
(重力崩壊型)

元素の束縛エネルギー (nuclear binding energy)

Hoffmann and Woosley (1992)

星の中心核の重力崩壊 (core collapse)

  • 核融合で生成出来るのは鉄まで
  • 中心部で鉄が出来ると核融合がストップ
  • エネルギーを生み出せず中心核は収縮
  • 外側では鉄の生成が続き中心核質量増大
  • \(> 10\ \mathrm{M}_{\odot}\)の星: 中心核の温度が100億度に達し、高エネルギーの光子により鉄が光分解
  • \(8 \sim 10\ \mathrm{M}_{\odot}\)の星: チャンドラセカール限界\((\simeq 1.44\ \mathrm{M}_{\odot})\)を超える
    • 電子が陽子に叩き込まれて中性子に
    • 電子捕獲:\(p + e^- \to n + \nu_e\)
    • (チャンドラセカールは1983年ノーベル物理学賞受賞)
  • 中心核が一挙に潰れ、発生したニュートリノの急激な加熱により星全体が爆発\(\to\)超新星爆発

重力崩壊型超新星爆発

Type II SNe (super novae)

COSMOS - The SAO Encyclopedia of Astronomy

超新星爆発ニュートリノ

  • 1987年2月23日に発生
  • 距離 50 kpc (16.3万光年)
  • 近傍銀河での超新星は400年ぶり
  • 感度向上した“Kamiokande-II”が1ヶ月前に観測開始直後
  • 小柴先生退官2ヶ月前
  • 2002年ノーベル物理学賞受賞

超新星爆発残骸
(Supernova Remnant; SNR)

かに星雲の爆発イメージ

かに星雲 (Crab Nebula)

かに星雲の記録

藤原定家による「明月記」寛喜二年十一月八日(1230年12月6日)の日記に陰陽師安倍泰俊の報告を挿入。

超新星の古記録

Wikipedia

  • SN185 (宋書)
  • SN393 (後漢書)
  • SN1572 (ティコの星)
  • SN1604 (ケプラーの星)

1604年以降銀河系内では超新星は観測されていない

ティコの星 (Tycho’s SNR)

膨張速度 \(4700 \pm 100\ \mathrm{km\ s^{–1}}\)

Credit: NASA/CXC/GSFC/B.Williams et al.

中性子星

中性子星の予測

  • 超新星爆発により中心に中性子星が出来る
    • \(\geq 30~\mathrm{M_{\odot}}\)の星ではブラックホールが出来る
  • チャンドラセカール限界を越えた白色矮星の崩壊
    • 連星系の伴星からの質量降着
  • 1934年 Baade & Zwicky により存在が予測
  • 半径10km程度\(\to\)暗く発見が困難

“パルサー”の発見

パルサー

  • 強い磁場を持つ天体が高速回転
  • 磁場による電子の加速により
    極方向に強い電波を発する
  • ただし当初は正体不明
    • 地球外生命体も最初疑われる

中性子星

  • かにパルサー(周期33msec: ミリ秒パルサー)の発見(1968)
  • \(遠心力 \leq 重力\)の条件から星に許される半径を見積もる
\[\begin{align} 遠心力 &= \frac{mv^2}{r}\\ 重力 &= \frac{GMm}{r^2}\\ 回転周期 &= \frac{2 \pi r}{v} = 33\ \mathrm{msec} \end{align}\]

より、\(M = 1\ \mathrm{M}_{\odot}\) なら \(r \leq 154\) km

\(\Rightarrow\) 白色矮星(\(M \simeq 1\ \mathrm{M}_{\odot},\ r \simeq 10^{3-4}\) km)ではあり得ず

中性子星であることが確定

Ia型超新星
(Type Ia SNe)

白色矮星

  • \(<8~M_{\odot}\)の星は炭素核融合を開始出来ない
  • 外層は流出し惑星状星雲に
  • 中心部に\(\sim 1\ \mathrm{M}_{\odot}\)の“芯”が残る
  • 中心部は炭素・酸素に富む
  • “電子縮退圧”により支えられる
    • 原子同士が“くっつきあった”状態
    • チャンドラセカール限界(\(1.44\ \mathrm{M}_{\odot}\))を超えると
      電子が原子核に叩き込まれて一挙に崩壊
  • 縮退圧で支えられたガスは、密度が温度に拠らない
    • 通常のガス:温度上昇 \(\to\) 膨張して密度低下
    • 縮退したガス:温度上昇しても密度変わらず
  • 縮退したガス中の核融合:密度が変わらないまま温度上昇し、核融合反応が暴走

Type Ia SNe

  • 白色矮星と通常の星の連星(白色矮星同士の連星との説も)
  • 白色矮星表面への質量降着
  • 降着したガスが白色矮星の表面で間欠的に水素核融合
    新星(Novae)
  • 爆発毎に降着質量の40%以上が積もる
  • \(1.38\ \mathrm{M}_{\odot}\)中心部の炭素が核融合開始 \(\to\) 暴走し爆発

NASA/JPL-Caltech

距離指標としての Type Ia SNe

  • 爆発時の質量一定 \(\to\) 爆発の明るさが一定
  • 距離指標として利用可能
  • 輝度が高く、遠方の距離測定に使える

ブラックホール

中性子星の崩壊

  • 中性子星質量が\(\simeq 2\ \mathrm{M}_{\odot}\)を超えると中性子自身の縮退圧でも支えられなくなる
  • ブラックホールに崩壊
    • 質量は\(\leq 10\ \mathrm{M}_{\odot}\)程度

ブラックホールの半径

質量 M の天体から距離 r にある質量 m の物体が無限遠に到達できる条件: \(運動エネルギー \geq 位置エネルギー\) \[\frac{1}{2}m v^2 \geq \frac{GMm}{r}\] 両者が等しい場合の速度を脱出速度と呼ぶ

\[ v_{esc} = \sqrt{\frac{2GM}{r}} \]

\(v_{esc} = c\) (光速)となる半径がブラックホールの大きさ\(\to\) Schwarzschild 半径

\[ r_g = \frac{2GM}{c^2} \]

星の質量による進化のまとめ

星の質量による進化のまとめ

元素の生成

  • 鉄(Fe)より重い元素は“r-process”により合成

生成物(太陽存在比)

data from Lodders (2010)

Hoffmann and Woosley (1992)

重力波

重力波の観測法

レーザー干渉計

Credit: LIGO/T. Pyle

重力波の観測装置

LIGO : アメリカの2台のレーザー干渉計

重力波の検出

  • 2015年9月14日9時50分45秒に重力波を初検出
  • 質量\(35.4~\mathrm{M}_{\odot}\)\(29.8~\mathrm{M}_{\odot}\)のブラックホールの衝突・合体
  • 距離 410 Mpc (13億光年)

Credit: . Ossokine/A. Buonanno/T. Dietrich (MPI for Gravitational Physics)/R. Haas (NCSA)/SXS project

重力波の検出波形

Credit: Alex Nitz/Max Planck Institute for Gravitational Physics/LIGO

中性子星合体イベントの検出

中性子星合体の検出

Credit: Alex Nitz/Max Planck Institute for Gravitational Physics/LIGO

中性子星合体

Credit: Alex Nitz/Max Planck Institute for Gravitational Physics/LIGO

発生源の同定

発生源の同定

日本の望遠鏡群による追観測

中性子星合体のr-processによる重元素合成

重力波源 GW170817 で実際に観測された明るさの変化 (●) と、シミュレーション (実線・破線) の比較。(クレジット: 国立天文台)

重力波源 GW170817 で実際に観測された明るさの変化 (●) と、シミュレーション (実線・破線) の比較。(クレジット: 国立天文台)

“Our results indicate that NS mergers synthesize a wide range of r-process elements and strengthen the hypothesis that NS mergers are the origin of r-process elements in the Universe.” (Tanaka et al. 2017)

これまで、r プロセス起源の重元素は主に超新星爆発で作られると考えられてきました。しかし、超新星爆発の理解が進むにつれ、少なくとも通常の超新星爆発では r プロセスが起こりにくいことが分かり、重元素がどこで作られているのかは天文学の大きな問題となっていました。今回、中性子星合体で r プロセスが起こっている証拠を観測的に捉えたことは、重元素の起源に迫る大きな一歩です。(すばる望遠鏡プレスリリース)

教科書が書き換わってしまった。

日本の重力波観測

TAMA300

1999年\(\sim\)

KAGRA

重力波の発見ラッシュ

重力波検出データベース