ESO/ NASA, ESA, M. Robberto ( Space Telescope Science Institute/ESA)
and the Hubble Space Telescope Orion Treasury Project Team
原始惑星系円盤からの惑星形成
- 原始星 (proto-stars) の周りに原始惑星系円盤 (proto-planetary disks; proplyds) が存在することは確実
- 原始惑星系円盤内部でどの様にして惑星系を形成するか?
太陽系の惑星
太陽に近い
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水星、金星、地球、火星
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⇕
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木星、土星
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太陽から遠い
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天王星、海王星
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太陽系惑星パラメータ一覧
(軌道長半径と公転周期との関係はケプラーの法則を参照。)
太陽系の各惑星の特徴
- 水星、金星、地星、火星:密度が高い。主に岩石や鉄。岩石惑星
- 木星、土星:質量大、(自己重力による圧縮にもかかわらず)密度小。質量の\(70 \sim 80 \%\)は水素とヘリウムのガス、残りは氷と岩石。ガス惑星
- 天王星、海王星:表面はガスに覆われる。密度は地球と土星の中間。ガスは質量の\(\sim 10 \%\)。内部の大半は氷と岩石。氷惑星
太陽系惑星形成の“古典的標準モデル”
「京都モデル」
古典的標準モデルの詳細
- 太陽質量程度の原始星形成
- 原始星周囲に\(\sim 1/100 \mathrm{M}_{\odot}\)の原始惑星系円盤
古典的標準モデルの詳細
- 円盤内で“ダスト”(\(\mu \mathrm{m}\)サイズの固体微粒子)の凝集
- 雪線より内側は鉄、ケイ酸塩(ケイ素、酸素、マグネシウム)
- 外側は氷が主成分
- ダストの円盤赤道面への沈殿、重力収縮によるkmサイズの微惑星の形成(約100万年)
- 「孤立質量」を集めた原始惑星の形成
孤立質量 (isolation mass)
- 大きな微惑星ほど強い重力により周囲の物質を暴走的に集めて成長
- 自身の軌道上周囲の固体微粒子を集積(“feeding zone”)
- feeding zone 内の全質量
= 孤立質量
- 太陽より遠い惑星ほど広い範囲からの物質を集められる
cf. 水星質量 0.06 M\(_{\oplus}\),
火星質量 0.11 M\(_{\oplus}\)
古典的標準モデルの詳細
- 原始惑星の衝突・合体成長
- 雪線より内側で小型の地球型惑星形成(岩石、鉄が主成分)
- 雪線より外側は氷も加わるため、より大きな固体惑星形成
雪線 (snow line):太陽からの輻射により塵表面の氷が昇華する境界
- 巨大ガス惑星の形成 (\(\sim 1\)千万年)
- \(\geq 5 \sim 10 \mathrm{M}_{\oplus}\)に達すると周囲の円盤ガスを取り込んで加速度的に成長
古典的標準モデルの詳細
- 数百万年後に原始惑星系円盤消失
- 原始惑星の合体・成長のタイムスケール \(\propto (軌道長半径)^3\)
(運動速度\(\times\)円盤密度)
- 外惑星は原始惑星の合体・成長が遅く、惑星形成前にガス円盤が消失
- 大量のガスを伴わない氷惑星の形成 (約1000万年 \(\sim\) 10億年)
円運動をするガス円盤から形成されるため、惑星の軌道はほぼ円軌道となる。
古典的標準モデルの既知の問題点
- メートルの壁
- 惑星落下問題
- ガス円盤内で惑星が形成されると、円盤ガスとの相互作用により中心星に落下
- 水星・火星形成問題
- 数値シミュレーションによれば、火星付近には地球より大きなサイズの惑星が出来てしまう。水星より内側にも多数の微惑星が出来る。
- 惑星形成の時間スケール
- 木星で既に形成に1千万年以上かかる。天王星や海王星は形成にかかる時間が太陽系年齢を越えてしまう!?
惑星落下問題
- \(1~\mathrm{M}_{\oplus} ~@~1~\mathrm{au}\)の惑星は10万年で中心星に落下
- 落下速度は惑星質量に比例
- 火星サイズの微惑星は落ちるのに100万年
- 木星サイズ@5auは10万年で落下
- ガス惑星はガス円盤が存在する間に成長するので確実に落ちてしまうはず
系外惑星探査の歴史
- 1940年代から大型望遠鏡を用いた系外惑星探査が始まる
- 1980年代には観測精度的には十分なレベル
- 1990年代には観測チームの撤退が始まる
- 地球サイズの惑星の検出には100年かかるとも。。。
系外惑星の初検出
-
1995年スイス・ジュネーブ大の Didier Queloz と Michel Mayor による
-
使用した望遠鏡はESO3.6m鏡
系外惑星探査の歴史
- 1995年、最初の系外惑星が発見される
- スイス・ジュネーブ大のチームによる
- 公転周期4日の「ホット・ジュピター」
- cf. 太陽系では木星や土星は5天文単位よりも離れた軌道を10年以上の公転周期で周回
- 次に発見されたのは「エキセントリック・ジュピター」
- 最初の発見から10年もかからず「スーパーアース(super-Earths)」が相次いで発見
- 多数の「ホット・ジュピター」「スーパーアース」が発見される様になる
- 現在は地球サイズの系外惑星も検出可能に
位置観測法 (astrometry)
-
1940年代から試みられるが検出は最近の1例のみ。大気揺らぎの補正の困難。
視線速度法 (radial velocity)
-
系外惑星を最初に検出したのはこの方法。大気揺らぎの影響を受けにくい。
-
1980年代にはホット・ジュピターなら余裕で発見出来るレベルに達していた。(1995年まで誰も気付かなかった。)
視線速度変化の大きさ
- 木星 13 m/s, 土星 3 m/s
- 但し公転周期木星12年、土星30年
- この間観測を続ける必要あり
- あまり軌道半径が大きな惑星は確認出来ない
- 地球 10 cm/s
- 中心星が軽く、軌道半径が数十分の1au以下の惑星が検出可能
- プロキシマ・ケンタウリはこの例
- ホット・ジュピター \(50 \sim 数百 \mathrm{m/s}\)が多い
- 現在の検出精度 \(< 1 \mathrm{m/s}\)
- 1980年代で \(10\sim 20 \mathrm{m/s}\) : ホット・ジュピターを余裕で検出出来る感度に達していた
- 1995年に最初の発見がなされるまで誰も気付かず
トランジットの検出
- 太陽–木星 : 減光率\(\sim 1\%\)
- 地上の10cm程度の望遠鏡でも検出可能
(アマチュアでも頑張れば発見可能)
- 中小口径望遠鏡の良いターゲット
(観測時間を確保出来るため大望遠鏡よりも有利)
- ケプラー衛星(口径1m)の活躍により現在は検出数で視線速度法を上回る
- \(<0.01\%\)の減光も検出可能(宇宙空間の利点)
- 地球・火星サイズの惑星も検出
- 現在までに確定したもので約2700個、候補天体含めると約4700個の系外惑星を発見
トランジット法の観測データ
食が観測出来る
確率
- 木星(5au) 0.1%, 12年に1回
- ホット・ジュピター(0.05au) 10%, 数日に一回
- 検出に有利・不利がある。観測データの解釈には注意が必要
直接撮像法 (direct imaging)
-
明るい中心星をマスクし、すぐそばの系外惑星を観測
-
すばる等の大望遠鏡・ハッブル等の宇宙望遠鏡
Fomalhaut b by Hubble
HR 8799 by Keck observatory
マイクロレンズ法 (gravitational microlensing)
-
重力レンズを用いた検出。孤立惑星の検出にも威力。
-
背後の星との距離関係で検出し易い軌道半径あり。
-
地球質量程度の惑星発見例あり(大阪大・名古屋大)。
系外惑星発見数
- 1995年に初の系外惑星発見
- 2003年に100個を超える
- 2010年に500個
- 2016年に3500個
Detection of exo-planets by discovery years
軌道半径 vs. 惑星質量
- 灰色:Kepler
- 青:視線速度
- 赤:トランジット
- 緑:マイクロレンズ
- 橙:直接撮像
- 右下に天体が無いのは検出限界のため
- \(0.1 \mathrm{M}_{\mathrm{J}}\)付近に岩石惑星とガス惑星の境目が見られる
軌道半径 vs. 惑星質量
- 古典的標準モデルでは内側に岩石惑星、外側にガス惑星
- 軌道半径0.1au以内にも多数の大質量惑星(ガス惑星)が発見される
スーパー・アース
- ホット・ジュピターよりもホット・スーパーアースの方が圧倒的に多数存在
- スーパー・アースの存在確率:地球型星で\(\sim 50\%\)(M型星もあまり変わらない)
- 検出限界以下の星を考えるとほとんど全ての星に地球サイズの惑星が存在!?
惑星質量 vs. 軌道離心率
- 軌道離心率:0が真円、1に近づく程扁平率大
- 中心星に近付いた時と遠ざかる時で距離が\(\pm\)何%変わるか
- 古典的標準モデルでは惑星軌道の離心率は0に近い筈
惑星質量 vs. 軌道離心率
- 離心率の大きな惑星が多数発見
- 質量の大きな惑星ほど離心率の大きな惑星が存在
- 離心率の小さな大質量惑星は主にホット・ジュピター
系外惑星探査から
新たに明らかになった
古典的標準モデルの欠陥
Exoplanets today: huge diversity
ホット・ジュピター
- 古典的標準モデルでは内域で巨大惑星は作れないはず
- 「惑星落下問題」により、惑星は出来てから移動する (planetary migration)
- ホット・ジュピターは説明出来るが、一方で多くのガス惑星は1auより外側にあることを説明出来ない
エキセントリック・ジュピター
- 古典的標準モデルに拠れば、惑星はほぼ円軌道を取る筈
三体問題による散乱(現在の有力な説)
- 質量の大きな星\(\to\)重たい原始惑星系円盤での3個以上のガス惑星の形成
- 多くの場合1つが弾き飛ばされ浮遊惑星 (lonely planets) となる
- 残り2つは軌道が大きく歪み、外側と内側に飛ばされて残る
- 重い惑星程離心率が大きい傾向も説明可能
- 中心星に近づくと潮汐力により軌道は再び円に近づく
- 内側の地球型惑星のほとんどは中心星に叩き込まれるか系外にはじき飛ばされる
三体問題
- 3つ以上の天体(質量が同程度)の周回軌道は一般に不安定
- 以下の例は制限付き三体問題(青と赤の天体は円軌道)だが、黄色の軌道は非常に不安定になる
- トランジット法による
系外惑星検出専用衛星(NASA)
- 2009年3月6日
\(\sim\) 2018年11月15日
ケプラーの運用終了
- 姿勢制御用の燃料枯渇により運用終了
- 2018年11月15日に“goodnight”コマンド送信
- “たまたま”ケプラーの死後388周年に当たる
- ケプラー(1571年12月27日 – 1630年11月15日)
運用中・計画中のミッション
- TESS – 2018年4月18日打ち上げ(NASA – SpaceX/Falcon 9) 近傍の系外惑星の全天探索
- CHEOPS – 2019年初頭打ち上げ予定(ESA) 近傍の地球型惑星の詳細観測
- PLATO – 2024年打ち上げ予定(ESA) 地球型ハビタブル惑星及び中心星の詳細観測
- ARIEL - 2028年打ち上げ予定(ESA) 系外惑星の大気分光
CHEOPS 打ち上げ (2019年12月18日)
ハビタブル惑星
(habitable planets)
ハビタブル・ゾーン
- 液体の海が存在出来る惑星(表面温度・重力)
- cf. 火星はハビタブル・ゾーンに入っているが重力が弱いため大気は地球の1/100以下
- \(1 \mathrm{M}_{\odot}\)の星で\(r = 0.9 \sim 1.5~\mathrm{au}\) (外側は不定性大)
- \(1 \mathrm{M}_{\odot}\)の星の\(10 \sim 20\%\)に地球サイズのハビタブルな惑星が存在と考えられる
ハビタブル・ゾーンの惑星の例
- M型星の方がハビタブル・ゾーンが中心星に近く、検出が容易
- これまでの検出の大半がM型星周り(惑星環境は地球とはかなり異なる?)
- 銀河系全体では地球の様な惑星がおよそ数百億個存在していると考えられる
M型星のハビタブル・ゾーン
- 100kmを超える深さの海
- いつも同じ方向に見える赤外線の「太陽」
- 降り注ぐ強烈な紫外線・X線
地球の温室効果ガスによる気候の安定化
<二酸化炭素>
- 火山などにより大気中に供給、海水中のイオンと反応して炭酸塩として海底に沈殿
\(\to\)プレートテクトニクスにより地球内部に還る(ただしこのループには数十万年かかることに注意)
- 気温上昇\(\to\)雨水によるミネラルの海への供給
\(\to\)海水中のイオンとの反応による二酸化炭素の減少
\(\to\)温室効果低下
- 気温低下\(\to\)海へのミネラルの供給低下
\(\to\)二酸化炭素が大気に蓄積
\(\to\)温室効果上昇
「負のフィードバック」がかかり、気候が安定化。
温室効果の暴走の例: 金星
- 二酸化炭素のフィードバックには<液体の水・陸地(水の循環)・プレートテクトニクス>が必要
- 金星にはプレートテクトニクスが無いと考えられる
- 金星は大気中二酸化炭素が地球大気の20万倍存在
- 地表面の平均気温は\(470^{\circ}\mathrm{C}\)
- 二酸化炭素による温室効果の認識は金星大気の研究から
地球の温室効果ガスによる気候の安定化
<水蒸気>
- 海からの供給
- 気温上昇\(\to\)水蒸気増加\(\to\)温室効果増大
- 気温低下\(\to\)水蒸気減少\(\to\)温室効果低下
「正のフィードバック」がかかり、気候変動が増大。
- 海だけで大陸の無い惑星
\(\gets\)水による正のフィードバックのみがかかり、気候は不安定。
ハビタブルゾーンの外側の限界
- 二酸化炭素のフィードバックにより決まる。
- 太陽–地球間距離の\(>1.4\)倍では、大気中の二酸化炭素が多くなりすぎて余剰分は雲になる。
\(\to\)それ以上温室効果が増大出来なくなる。
火星大気
- 火星の大気圧は地球の0.6%(ほとんどが二酸化炭素)
- プレートテクトニクスの早期の停止
- 火山活動の停止\(\to\)大気供給源の枯渇
- 磁場の消失による太陽風の影響
- 温室効果の消失\(\to\)平均気温\(-60^{\circ}\mathrm{C}\)
太陽の光度進化
- 主系列星中心核での水素の核融合
- 徐々にヘリウムに変換
- 中心核のガスの密度が上昇
- 核融合活動の活発化による温度上昇
地球のハビタビリティ
- 誕生直後の太陽は現在よりも30%程度暗かった。
- 現在から10億年後には地球はハビタブルゾーンを外れる。
ガリレオ衛星
-
イオ:活発な火山活動により表面は溶岩に覆われる
-
エウロパ:一面の氷と無数の赤いひび割れ
-
木星磁場との相互作用による液体の存在の確認
-
ナトリウムイオンやマグネシウムイオンの溶け込んだ導電性の “海水”(塩や硫酸塩\(\mathrm{SO_4^{2-}}\))
エンセラダスのプリューム
- 氷の割れ目からのガスと固体微粒子の噴出
- カッシーニ探査機によるガス成分の直接観測
- 2015年10月28日
- 水蒸気90%, 二酸化炭素5%, 有機分子1%程度
- 氷に加え、ナトリウムやカリウムを含む固体微粒子
\(\gets\)岩石と液体の水との反応による供給
- シリカ\((\mathrm{SiO_2})\)の存在
\(\gets\)岩石と水との高温反応により生成
- メタンやアンモニア等の還元的分子も存在し、硫酸イオン\((\mathrm{SO_4^{2-}})\)はみられない\(\to\)還元的な分子の供給
木星や土星の氷惑星(エウロパやエンセラダス)の氷の下の海に生命は存在可能か
- 潮汐加熱による海の存在
- 海底熱水噴出孔による熱
- 還元性の鉱物の二酸化炭素による酸化エネルギーの利用
- メタン菌によるメタン生成反応 \(\mathrm{4H_2 + CO_2 \to CH_4 + 2H_2O}\)
地球の深海底の熱水噴出孔に見られるメタン菌や細菌(JAMSTEC)
水以外に依存する生命:タイタン
- 十分な大気が存在する唯一の衛星
- 窒素を主成分とする大気:地球以外の唯一の天体
- 98.4%の窒素と1.4%のメタン、0.1から0.2%の水素
- 太陽の紫外線によるメタンの分解
タイタン表面のメタンの湖(レーダー画像)
- 表面にメタンの海が存在
- メタンの気体・液体・固体が共存(三重点)
- 地球の水の循環に相当するメタンの循環が存在
WikimediaCommons
メタンと太陽光による生命維持の可能性
- 地球上の光合成: \(\mathrm{H_2O + CO_2 → [CH_2O] + O_2}\)
- 水を太陽光で酸素と水素に分解、水素と二酸化炭素により有機物を生成。
- 有機物を酸素で燃やし、水と二酸化炭素に戻すことで太陽光エネルギーを取り出せる。
- 太陽光によるメタン\((\mathrm{CH_4})\)の分解
\(\to\)アセチレン\((\mathrm{C_2H_2})\)と水素\((\mathrm{H})\)が生成
- アセチレンを食べて水素を呼吸する生命!?
地球の水・炭素・窒素の含有量
- 宇宙の元素組成:水素、ヘリウム、酸素、炭素、ネオン、窒素、マグネシウム、ケイ素、鉄、硫黄、…
- 水を作る水素と酸素、生命を形作る炭素や窒素は宇宙には豊富に存在
- 惑星に取り込まれるためには、円盤ガス中でダスト(固体微粒子)上に凝縮する必要あり
- 円盤ガスを大量に取り込めるのは巨大惑星のみ
- cf. 地球には水素は非常に少なく、ヘリウムもほとんど含まれていない
- 氷ダストの凝縮は小惑星帯の外(約3au:雪線以遠)
- 二酸化炭素などの炭素化合物やアンモニアなどの窒素化合物が凝縮出来るのは天王星軌道(\(\sim 20\)au)よりも外側
地球 \(\neq\) 水の惑星
- 地球の海の総質量 \(=\) 地球全体質量の0.02%
- マントルの岩石中の水を足してもせいぜい0.1%程度
- cf. 海の平均水深: 4km程度 vs. 地球半径6400km
- 海は「薄皮1枚」でしかない
- 炭素・窒素の存在比推定値: 地球の値は太陽での存在比の\(1/1000 \sim 1/10万\)
氷を含んだ小天体の衝突
地球形成後に小天体が衝突
- 小天体が雪線より内側に入ると天体表面から氷成分が徐々に昇華
- サイズ1kmの小惑星なら10万年程度氷成分を維持出来る
- cf. 彗星の可能性も検討されたが、酸素・窒素同位体比が地球と異なることが判明 (但し最近も彗星を起源とする説を支持する観測結果も。)
- 隕石(小惑星帯から飛来する破片)は彗星よりは地球に近い同位体比を持つ
- 炭素質コンドライト(隕石の一種)は10%程度の水を含む
- C型小惑星(炭素質コンドライトの元)が地球に水を運んだと考える研究者が多い
水を持ち込むその他のアイディア
- 雪線の移動
- (形成直後の原始惑星系円盤は高温 \(\to\) やがて冷える)
- 初期の原始惑星系円盤はガスが豊富なため、中心星からの光が遮られて雪線は地球軌道よりも内側にあった
- ただし炭素・窒素まで凝縮させるのは困難
- 雪線の内側でも、ダストの内部に守られて少量の氷が存在し、岩石惑星に取り込まれると考える研究者も居る
小惑星サンプルリターン
- はやぶさ
- S-type (イトカワ)
- 2003年打ち上げ
- 2005年夏小惑星到着
- 2010年6月13日地球帰還
ISAS/JAXA
-
緑矢印が含水鉱物に起因する吸収
-
青矢印は水やアンモニア化物に起因する吸収
生命の存在を示す「バイオマーカー」の観測
- 代謝に関係するバイオマーカー
- 酸素\((\mathrm{O_2})\)・オゾン\((\mathrm{O_3})\)
- 一酸化炭素\((\mathrm{CO})\)・二酸化炭素\((\mathrm{CO_2})\)
- 水\((\mathrm{H_2O})\)
- メタン\((\mathrm{CH_4})\)
バイオマーカーの成因1
- 地球上の光合成: \(\mathrm{H_2O + CO_2 → [CH_2O] + O_2}\)
- 水を太陽光で酸素と水素に分解、水素と二酸化炭素により有機物を生成。
- 有機物を酸素で燃やし、水と二酸化炭素に戻すことで太陽光エネルギーを取り出せる。
- メタン菌によるメタン生成反応: \(\mathrm{4H_2 + CO_2 \to CH_4 + 2H_2O}\)
- 海の存在
- 海底熱水噴出孔による熱
- 還元性の鉱物からの水素の供給
- 二酸化炭素による水素の酸化エネルギーの利用
バイオマーカーの成因2
- 酸素\((\mathrm{O_2})\)・オゾン\((\mathrm{O_3})\): 紫外線による水\((\mathrm{H_2O})\)の分解で生成可能
- メタン\((\mathrm{CH_4})\): 巨大ガス惑星なら水素が大気中に存在。炭素との科学反応で生成可能
- 両者が共存することは難しい
- 水素やメタンの存在するガス: 還元的
- 酸素の存在するガス: 酸化的
大望遠鏡、衛星望遠鏡による観測
- 既存の大望遠鏡: VLT, Gemini, Subaru
- 衛星望遠鏡: ARIEL
- TMT: 日米中印加共同で2020年代後半の観測開始を計画
NAOJ
光学望遠鏡一覧
口径30mあると。。。
\[\begin{align}
\lambda/D &= 10\mu\mathrm{m}/30\mathrm{m}\\
&= 3.3\times 10^{-7} ラジアン\\
&= 0.069 秒角\\
\end{align}\]
- 1pc先の1auの角度=1秒角(定義)
- 10pc先の0.7au離れた天体を見分けられる
- 10pc先の「地球」を直接観測し、大気組成を調査可能
- 観測波長\(2.5\mu\mathrm{m}\)なら\(40\mathrm{pc}\)でも観測可能
「アストロバイオロジー」の本格化
アストロバイオロジーセンター 2015年開所
- 系外惑星探査プロジェクト室
- すばる望遠鏡やTMT、宇宙望遠鏡によるハビタブル惑星探査
- 宇宙生命探査プロジェクト室
- ハビタブル惑星における大気の分析とバイオマーカーの確認
- アストロバイオロジー装置開発室
- TMTや将来の宇宙望遠鏡による地球型系外惑星及びバイオマーカー探査に特化した装置の開発研究